日弁連が死刑廃止の宣言案 来月提出 「容認できぬ」遺族反発- 記事詳細|Infoseekニュース
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社会
日弁連が死刑廃止の宣言案 来月提出 「容認できぬ」遺族反発

産経ニュース2016年9月25日07時58分
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 ■「被害者の人権守られない」

 日本弁護士連合会(日弁連)が「平成32年までに死刑制度の廃止を目指す」とする宣言案を、10月7日に福井市で開かれる「人権擁護大会」に提出することが分かった。日弁連はこれまでも死刑廃止についての社会的議論を呼びかけてきたが、廃止を明確に打ち出すのは初めて。一方、死刑制度の必要性を訴えてきた遺族や弁護士からは反発の声が上がっている。(滝口亜希)

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 「死刑制度に反対している人は、何の落ち度もない遺族がどのように暮らしているか、考えたことはあるのでしょうか」。人権擁護大会を前に、今月15日に東京都内で開かれたシンポジウム。地下鉄サリン事件で夫を亡くした高橋シズヱさん(69)が訴えた。

 今回、日弁連がまとめた宣言案は「遺族が厳罰を望むことはごく自然なこと」としながらも、死刑制度を廃止する国が増加していることなど国際情勢に言及。国内でも袴田事件など再審開始決定が続いており「冤罪(えんざい)で死刑となり執行されれば、二度と取り返しがつかない」としている。その上で「国連犯罪防止・刑事司法会議」が日本で開催される32年までに死刑制度を廃止し、終身刑などの導入を検討するよう求めている。

 日弁連は23年に、死刑廃止についての全社会的議論を呼びかける宣言を採択。今回、廃止にまで踏み込んだことは、露メディア「スプートニク」が日本語版で「グローバルなトレンドか、日本社会の立場の変化か?」と取り上げ、プーチン大統領が死刑の再実施に反対したという演説とともに紹介するなど、国外からも注目が集まっている。

 宣言案は人権擁護大会に出席した弁護士の過半数の賛成で採択されるが、反発の声も上がっている。

 「日弁連は人権団体といわれているが、結局は加害者の人権しか守っていない。宣言案はとても容認できない」と話すのは、全国犯罪被害者の会(あすの会)の松村恒夫代表幹事。「死刑は被害者の無念に報い、遺族がけじめをつける機会でもある」と死刑の必要性を訴える。

 そもそも、全弁護士が加入を義務付けられた日弁連が特定の立場を表明することには批判も根強い。

 犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務局長の高橋正人弁護士は「強制加入団体が思想・良心の自由に関することを多数決で決めるのはおかしい。こんなことが通るならやりたい放題だ」と手続き自体を問題視する。

 日弁連は27年に、死刑求刑が予想される事件の弁護活動について会員向け手引を作成。否認事件などでは被害者が被告に質問できる被害者参加制度に反対することなどを盛り込んだ。高橋弁護士は「宣言案は、被害者の手続き面の権利を侵害した手引と合わせて、被害者の権利を根こそぎ奪い取るものだ」と憤る。

 これに対し、日弁連死刑廃止検討委員会事務局長の小川原優之弁護士は「個々の会員の思想・信条を侵害するものではない」とした上で、「日本では死刑の存廃に関する公の議論が深まっていない。日弁連の宣言で何かがすぐに変わるわけではなく、社会全体が死刑について議論するきっかけにしてほしい」と話した。