気になる話 東岡忠良

正直、ジャンルは決めていません。しいて言えば「自分自身の興味があるものごと」でしょうか。魚釣りから、昭和のもの。鉄道に小説や漫画。気になったものから、順番に掲載できたらいいな、と考えています。何とか続けていけるよう、頑張りたいですね。

皆さん、こんにちは。
東岡忠良(あずまおかただよし)です。
五月一日から始まる『ライト文芸大賞』に、
題名、
『双子の妹の保護者として、今年から共学になった女子高へ通う兄の話』
ですが長いので、
『ふたいも』
をエントリーしました!

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このブログの最後に現在の順位を書き込みたいと思います。

作品紹介。

  二卵性双生児の兄妹、新屋敷竜馬(しんやしきりょうま)と和葉(かずは)は、元女子高の如月(きさらぎ)学園高校へ通うことになった。
  今年から共学となったのである。
  そこは竜馬が想像していた以上に男子が少なかった。
  妹の和葉は学年一位の成績のGカップ美少女だが、思春期のせいか兄竜馬の『おちんちん』が気になって仕方がない。
 スポーツ科には新屋敷兄弟と幼稚園からの幼馴染で、長身スポーツ万能Fカップのボーイッシュ少女の三上小夏(みかみこなつ)。
  同級生には学年二位でHカップを隠したグラビアアイドル級美人の相生優子(あいおいゆうこ)。
 中学からの知り合いの小柄なIカップロリ巨乳の瀬川薫(せがわかおる)。
 そして小柄な美少年男子の園田春樹(そのだはるき)。
 竜馬の学園生活は、彼らによって刺激的な毎日が待っていた。
 新屋敷兄妹中心に繰り広げられる学園コメディーです。

もし「笑った!」「面白い!」と思って頂けたら、投票をよろしくお願い致します。

2023年
4月30日 199位 5月1日 191位 
5月2日 103位 5月3日 112位
5月4日 127位 5月5日 87位
5月6日 93位 5月7日 98位
5月8日 76位 5月9日 78位
5月10日 78位 5月11日 80位
5月12日 83位  
5月14日 90位 5月15日 94位
5月16日 95位 5月17日 95位
5月18日 97位 5月19日 97位
5月20日 98位 5月21日 99位
5月22日 100位 5月23日 100位
5月24日 100位 5月25日 102位
5月26日 103位 5月27日 106位
5月28日 107位 5月29日 111位
5月30日 113位 5月31日 112位

なんか凄く良かった……。
 "【2ch】ゲンちゃんのたばこ屋さん!【感動】 #Shorts" を YouTube で見る https://youtube.com/shorts/f-trXbTgFao?feature=share

  "【和訳】「はいてますよ!」とにかく明るい安村がイギリスを安心させる! | BGT 2023" を YouTube で見る https://youtu.be/-pJ2o6h79iM

 こんにちは。
 東岡忠良(あずまおかただよし)です。  小説サイトのアルファポリスで連載中です。

 【双子の妹の保護者として、今年から共学になった女子高へ通う兄の話】 https://www.alphapolis.co.jp/  #アルファポリス
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【17】双子の妹の保護者として、今年から共学になった女子高へ通う兄の話

【17】竜馬と優子。Hカップの先輩、岡本副部長に「可愛い」という理由から軽くイタズラを受ける。

  東岡忠良(あずまおか・ただよし)

※この小説へのご意見・ご感想・誤字脱字・等がありましたら、お気軽にコメントして下さい。
 お待ちしています。

──1──

 美術教室が見えてくる。美術道具の倉庫もあるために、普通の教室の倍はあるが、実際に生徒が作業するのは、一つの教室になっている。
 和葉は静かに扉をノックした。
「すいません。見学したいのですが構いませんか?」
 と教室を覗いた。
「ええ。大丈夫よ。入って」
 小柄な二年生の先輩が対応した。
「お兄ちゃん。優子。入りましょう」
 と三人は仲良く教室内に入った。絵の具の臭いがしている。すでに十一人ほどがいて、道具と画用紙を用意していたり、すでに絵を模写していたり、お互いの似顔絵を描いたり、中には漫画を描いている者もいた。
「準備している人もいるけど、もう描き始めている人もいるのね」
 と和葉はキョロキョロと室内を見ている。
「ええっと、入部希望者ってことでいいのかしら?」
 長い黒髪で聡明そうな美人が話しかけてきた。
「ええっと、入部希望じゃないんです。一日体験がしたくて来ました」
 と和葉は言った。
「まあ。大切な放課後の時間を私達の部のために使ってくれるのね。嬉しいわ」
 と喜んでくれている。
「出来たら彫刻の模写をしたいんですけど」
 と和葉。
「まあ、それは良い考えね」
 と隣(とな)りの倉庫の扉を開けてくれた。
「どうぞ。ここから好きな像を持っていくといいわ」
 と十点ほどが並んでいる。もちろん、すべて三〇から四〇センチくらいに縮小された物で、頭部から胸像そして身体全体の物と様々である。
「あ。ミロのヴィーナスがあるわ」
 と和葉はそれを手に取った。それをしばらく見つめていると、
「お兄ちゃん」
「なんだよ?」
「良いおっぱいしてるわよ」
 とミロのヴィーナスの縮小レプリカの胸を撫でた。
「和葉。真面目にやれよ」
 と竜馬は言った。
「ちょっと、あなた! 美術品をそういう見方をするのは不謹慎よ」
 とここまで案内をしてくれた黒髪美人の上級生が注意した。
「あ。すいません」
 と素直に謝る和葉。
「まあ、いいわ。時々いるのよね。裸の美術品を見つけてはいやらしい反応をする人。これからは気をつけてね」
 と簡単に許してくれた。
「ところで先輩は私達が美術品を選ぶまで、ここに居られるのですか?」
 と和葉。
「もちろんよ。なんせ、過去に美術品の盗難があったらしくてね。あなた達三人がこの部屋から出るまで、見ないといけないのよ」
「そんなことがあったんですか」
 と優子。
「それは酷いですね」
 と竜馬。
「と言っても、この学校が創立して間もない頃の出来事だったみたいだけどね。今はそういうことは聞いたことがないわ。まあ、うっかり壊しちゃったってことはたまにあるけどね」
 とロングの黒髪美人の先輩は話してくれた。
「それにしても」
 とロングヘアーの美人先輩は、竜馬のすぐ近くまでやって来て、
「あなた、今年入った男子生徒よね。ちょっと失礼」
 と竜馬の腕や足そして腰や肩を触り始めた。
「ちょ、ちょっとなんですか!」
 と竜馬は一歩引いた。
「あ。ごめんなさい。申し遅れたわね。私は二年の岡本響子。美術部の副部長をやっているわ」
 と言いながらも、竜馬の首と頬を撫でた。
「ちょっと、岡本先輩」
 と竜馬は困惑気味である。
「筋肉質で長身で、そして顔もとてもいいわ。どう? 美術部に入らない? いや、もし入らなくてもいいから、モデルをやってみない?」
 と竜馬に顔をギリギリまで近づけて言った。
「もしかして! モデルは裸ですか!」
 と和葉は食いついた。
「あはは! さすがに高校ではそれは禁止されているわ」
「そうですか……」
 とあからさまに残念そうに下を向いた。
「まあ、でも」
 と岡本先輩は明るい口調で、
「学校指定の水着なら問題ないわよ!」
 と楽しそうに言った。
「み! 水着! 竜馬さんの水着!」
 と優子はすでに顔が赤い。
「岡本先輩! その場合は水着の股間の膨らみをクロッキーしてもいいんですか!」
 と和葉は手を上げながら言った。
 すると、岡本先輩は少し考えてから、
「モデルさんがOKしてくれたら、いいんじゃないかしら」
 と答えた。すると、
「お兄ちゃん! もう、彫刻の模写はやめたわ。お兄ちゃんの水着姿の模写をするわ! 岡本先輩、水着がありますか?」
 と凄い勢いで詰め寄った。
 岡本先輩は和葉の勢いに押されて半歩下がり、
「ごめんなさい。男子用の水着はないわね。なんせ、昨年まではこの学校は女子校だったからね」
 と微笑みながら言った。
「そうだった……」
 と明らかに和葉は肩を落とした。
「去年まで女子校ってことで、困るのは男子生徒限定だと思っていたのに、こんな形で女子生徒が困ることになるなんて思いもよらなかったわ……」
 と俯いた。
「まあ、代わりと言ってはなんだけど」
 と岡本先輩は少しホコリの被った段ボール箱を持って来て開けた。
「女性用の水着は沢山用意してあるのよ。よかったら、あなたがモデルをやってみない?」
 と紺色のワンビースの水着を取り出した。
 和葉はあからさまに嫌そうな表情になり、少し黙っていたが、
「それは無理です。なんせ、私」
 と一呼吸置いて、
「Gカップですから。そんなサイズの合わない水着は入りません。なんせ、Gカップなので」
 と二回言った。
 すると岡本先輩は、
「大丈夫よ。このスクール水着は思いの外、伸びるから」
 と勧めてくる。
「私、胸が苦しくなるのは嫌なんです、先輩。なんせ、Gカップなので」
 とまた言ったが、
「大丈夫よ。だって私、この水着を着てモデルをやったことが何度かあるから」
「岡本先輩が?」
「そうよ。確かに快適とは言えないかもだけど、Gカップくらいじゃ問題ないはずよ。Hカップの私が言うのだから間違いないわ」
 と岡本先輩は胸を張った。
「えっ! 岡本先輩ってHカップもあるのですか!」
「そうよ。でも胸が大きいって生活する上で大変なだけだけどね」
 と残念そうに言った。
「先輩!」と和葉は顔をくっつきそうなくらいに近づけた。
「な! 何かしら?」
「胸が大きいことは女性に取ってはとても大切なことです!」
「えっ! そうかしら?」
「そうです!」
「そ、そう。ありがとう……」
 と和葉の勢いに押されていた。
「ちなみに、ここにいる優子もHカップです」
 と余計な情報を話した。
「ちょ! 何でいつもいつも胸の話をするたびに、私のサイズを教えるのよ!」
 と優子は和葉を怒った。
「優子のサイズだけじゃなくって、私のサイズも教えたけど?」
 と返すと、
「和葉だけのサイズでいいじゃないの!」
 と突っ込んだ。
「まあまあ、そんなに言い合いをしないで。女同士で胸の大きさを競う話をしたってしょうがないでしょう」
 と岡本先輩。
「わっ! 私、別に競ってないです!」
 と優子は岡本先輩に言った。
「それにそんなに取り乱して。彼氏さんが驚いてしまっているわよ」
 と岡本先輩は竜馬の肩に手を載せた。
「えっ……。そ、そんな……。竜馬さんのことを彼氏さんだなんて……」
 と優子は頬を赤くして、もじもじとし始めた。
「あらまあ。ふ~ん」
 と岡本先輩は優子と竜馬を交互に見つめた。
 そして、
「あなた。頑張るのよ」
 と優子の肩を二度、ポンポンと叩いた。
「えっ。えっ」
 と狼狽(うろた)える優子。
「じゃあ、この話題は取り敢えず、これでおしまい。ところで彫刻は選ばないの?」
「あ! そうでした」
 と和葉は机に並ぶ美術品のレプリカを選び始めた。
「あった。これだわ」
 とミケランジェロのダビデ像を縮小した四十センチほどの像を手に取った。

──2──

「よかった。あったわ」
 と和葉は見つけたダビデ像を手に取った。
「前々から、ミケランジェロのこの作品は素晴らしいと思っていたわ」
 と言うと、
「あら。あなた、なかなか見る目があるわね。ルネサンス時代を代表する名作ですからね。じゃあ、これを模写するのね」
「はい。もし、よかったら鉛筆と画用紙を貸して頂けませんか?」
 岡本先輩は、
「もちろんよ! 他の二人もダビデ像でいいわね?」
 と聞いた。
 二人は「はい」と返事をすると、
「じゃあ、模写できるように場所を作るわね。すぐに出来るから待っててね。それと私は出ていくけど、この倉庫にいる間は物品をイタズラしないように」
「大丈夫です。絶対に触りませんから」
「分かったわ。じゃあ、待ってて」
 と岡本先輩は倉庫から出ていった。
 それを和葉は確認すると、
「お兄ちゃんと優子」
 と二人にダビデ像を正面に向けた。
「なんだよ?」
「ちょっと、何よ?」
 和葉が何をしたいのかまったく分からない二人は、少しキョトンとなった。そこに、
「見て。おちんちんよ」
 と像のその部分を左手人差し指で撫でた。
「お! お前、最低だな!」
 と竜馬は怒る気にもならない。
「どう、優子。おちんちんよ!」
 と優子の顔の前に像を持っていった。
 すると、
「私……。家族以外で初めて見た、おちんちんだわ……」
 と頬を赤らめながらも、それを見つめた。
「優子。いい。これからこのダビデ像を、私達三人が凝視するのよ。紙に鉛筆を走らせるだけで」
 和葉は一呼吸置いて、
「この、おちんちんは見放題よ!」
 と少し高揚気味に和葉は言った。
「言い方!」と竜馬が突っ込んだところに、
「お待たせしました、お三人さん。準備が出来たのでどうぞ」
 と岡本先輩が笑顔でやって来た。
 岡本副部長を含めた四人は倉庫を出ると、美術教室の隅の方だが、ちゃんと三人の場所を作ってくれていた。
 机の前に椅子があり、その左右に椅子が配置されていた。その椅子の上には古い画板が置かれ、画板には真っ白の画用紙と濃い目の鉛筆が挟まっている。
「人によっては必要でしょうから、鉛筆削りとナイフと予備の鉛筆を机の物入れに入れておいたから」
 と岡本先輩は笑顔で言った。
「ありがとうございます」
 と竜馬が少し照れながら言うと、
「まあ、照れちゃって可愛いわ。どう、美術部に入らない? 歓迎するわよ」
 と竜馬の真ん前に立って微笑み、右手で竜馬の頬を撫でた。
「ちょ! 先輩!」
 と驚いた竜馬を見ずに、岡本先輩は和葉と優子に目をやった。
 和葉は、少しシラケたような表情をしている。
 優子は「あ、あ、あ」と言いながら、少し震えていた。
「なるほど。そういう関係か」
 と岡本先輩。
「顔の感じが似ているのと、書いてもらった名前の名字を見たら同じなので、あなた達二人は兄妹?」
「はい。そうですけど」
 と気だるそうに答える和葉。
「二人共、一年生なのね。ということは双子なのね。それも二卵性の」
 と言うと、和葉は少し驚いて、
「どうしてすぐに二卵性双生児って分かったんですか? みんな、どちらか訊いてくることが多いのに」
 と和葉は不思議がった。
「一卵性双生児で男女で生まれてくることは、かなり稀なケースだからね」
「それ、余り知られていないのに、よくご存じですね」
 と和葉。
「実は私、一卵性の双子なのよ。ほら、あそこに」
 と指を指した先には、岡本先輩そっくりな女生徒が熱心に絵を描いていた。
「静かに絵を描いていたからまったく分からなかったわ」
 と和葉。
「凄い! 本当にそっくり!」
 と優子。
「先輩も双子だったんですね」
 と竜馬。
「あっちは妹の明美よ。私達姉妹は絵を描くのが好きで、二人共美術部に入ったって訳」
 と姉の岡本先輩は軽く手を上げた。するとそれに気づいた妹の岡本先輩も手を上げた。
「という理由で人よりもちょっとだけ双子には詳しいのよ。だから」
 とまた、竜馬の近くに行き、今度は身体を寄せて、
「新屋敷竜馬君。部に入って欲しいけど、無理に入らなくてもいいから、時々ここに遊びに来てね」
 と長身の竜馬を少し見上げるようにして言った。偶然かわざとかは分からなかったが、制服の上からでも分かるくらいの大きな胸を、姉の岡本先輩は竜馬の身体に押し付けた。
「あのう、先輩。私、絵を描きたいんですけど!」
 と不機嫌そうに優子は言った。
「あら、ごめんなさい。お邪魔だったわね」
 とクスリと笑うと、
「お三人さん、ではごゆっくり」
 と去って行った。
「優子が上級生に対して、ケンカを売るところを初めて見たわ」
 と和葉。
「ケンカなんて売ってないわよ!」
 と優子。
「まあでも」
 と和葉は続けた。
「お兄ちゃんがモテモテなのはよく分かったわ」
 と竜馬を見た。
「何を言っているんだい。ただ単に上級生からからかわれているだけだから」
 と竜馬。
 和葉と優子は少し間を開けて、
「じゃあ、座って写生しましょうか」
「賛成。じゃあ、私はこの席」
 と優子は真ん中に座った。
「優子が真ん中なの。仕方ないわね。私は壁際でいいわ」
 と机から見て右に座った。
「じゃあ、僕はこっちに」
 と絵を描いている人がいる側に、竜馬は座った。
「私、時々ダビデ像を手に取ることがあると思うけど許してよ」
 と和葉。
「和葉。あなた、やけに熱心ね。分かったわ。私も一生懸命描くわ。勉強と体育では勝てないけど、絵くらいは勝ちたいものね」
 と本気だということを表すように、腕まくりをした。
「いいわ。優子。受けて立ちましょう。もちろん、私は元々本気だけど」
 と二人の熱のこもった写生対決が始まった。
「えっと……。まあ、いいか」
 と何か言いたげだった竜馬だが、すぐに自分も写生を始めた。
 しばらく三人は黙ったまま、絵を描くことに集中していた。
 三十分経過したくらいに和葉が、
「お兄ちゃん、写生の具合はどう?」
 と訊いた。
「ああ。一生懸命描いているけど」
 と答えた。
 そしてすぐに、
「お兄ちゃん、射精の具合はどう?」
 と訊いた。
「だから、描(か)いているって言ってるだろう」
 と答えると、
「まさか、マスをかいてないわよね? 描くのはダビデ像よ」
 と和葉が言ったので、
「こら! お前は何を訊いているんだよ!」
 と少し怒気を込めて突っ込んだ。
 すると、
「マス? マスって何? ダビデ像と枡(ます)が何か関係してるの?」
 と優子は不思議そうに言った。
 思わず、竜馬と和葉は「え!」と言って、優子を注目した。
「ねえ、和葉。枡とダビデ像が何か関係があるの?」
 と優子は和葉にしつこく理由を訊いた。
「優子。あなた、知らないの?」
 困った顔を向けた。
「知らないのって。それって知らないとこれから困ることなの?」
 としつこい。
「優子。教えてあげたいけど、説明をすると長くなるわ。今は写生に集中しましょう」
 とダビデ像の方を向いた。
「もう。分かったわよ。でも後で教えてね」
 と言い残して、優子も写生に取り組んだ。
「……どう説明する気だ?」
 と竜馬はつぶやきながら、また写生を始めた。
 しばらく三人は静かにスケッチしていたが、
「ちょっとごめんなさい」
 と写生物のダビデ像を手に取って、
「すいません。五十センチくらいの物が測れる物差しってありますか?」
 と岡本副部長に向かって言った。
「あるわよ。あなた、熱心ね。ちょっと待っててね」
 とメジャーを持ってきた。
「これしかないんたけど、大丈夫?」
「はい。大丈夫です」
 と言って、そのメジャーでダビデ像の身長から
足の長さや腕などを細かく、和葉は測った。そして測った数値を自分のノートの空白に書き込んで行った。
 その数字を使って何かを計算しているようだった。そして今度は自分の手を測り始めた。
「和葉のやつ、一体何をやっているんだろう?」
 と優子の向こうに座る妹を見つめた。
「あなたの妹さん、とても熱心ね」
 と岡本副部長は感心しているようだったが、
「本当にそうなんですかね?」
 と竜馬からしたら不安で仕方がない。
「あの顔は何かとんでもないことを考えているようにしか見えないんだけど」
 と呟いた時だった。
「えっ! まさか! そうだったのね……」
 と和葉は何かが分かったようだった。
 
──3──

「描き始めてから一時間くらいは経ったわ。途中でいいから見せてくれないかしら?」
 と岡本副部長は言った。
「途中で見せるって少し恥ずかしいですね」
 と竜馬。
「まあ、私はまあまあかな」
 と優子。
「私はもう少しで完成ね」
 と和葉。
「じゃあ、君。新屋敷竜馬君。見せてくれるかな?」
 と座っている竜馬に、岡本副部長は屈むようにして顔を近づけて言った。
「あ。は、はい」
 と少し動揺する竜馬。竜馬の横にいる優子はあからさまに不機嫌そうにする。
「えっと。これです」
 と竜馬は岡本副部長と優子と和葉に見せた。
 輪郭や陰影をある程度きちんと描かれており、ダビデ像の特徴をうまく捉えている絵だった。
「なかなかいいわよ。まだ、完成じゃないってことだから評価は良くないかもしれないけど、五段階で四はあげてもいい良作ね」
 と岡本副部長は感心している。
「竜馬さん、上手……」
 と優子は感心している。
「そんなに褒められると恥ずかしいです」
 と竜馬は後ろ頭を掻くと、
「フフッ。照れる姿も可愛いわ」
 と岡本副部長は少し屈んで、竜馬の右肩に豊かな胸を少し触れさせて、細い左腕を竜馬の背中から回し、真っ白な指の手のひらで、竜馬の頬を撫でた。
「ちょっと先輩」と慌てる竜馬。
「ごめんなさい。もう、君が可愛くて可愛くて仕方がないのよ」
「参ったなあ。もう」
 と竜馬。
「あ。あのう、先輩。そういうのはやめて下さい」
 と優子は軽く怒って見せた。
「そうね。少し興奮しちゃってやり過ぎちゃったわ。ごめんね、竜馬君」
 と言いながら、竜馬の右の頬にキスでもするのではないか、と思うほど近づき呟いた。
「せ、先輩。ちょ、ちょっと。それに僕の肩にそのう。先輩の胸が当たっています」
 と、どうしていいか分からないという様子である。
「気にしないで。君になら当たっててもいいの。それとも女性の胸が当たるのはお嫌かしら?」
 と微笑んだ。
「そ、それは嫌じゃないですが、余りにスキンシップがあり過ぎるのもどうかと……」
 と困っていると、
「先輩! もう、そのくらいで許してあげて下さい!」
 と優子が強い口調で言った。すると、
「まあ!」と言いながら、今度は岡本副部長は優子に抱きついた。
「ちょっと、先輩!」
「あなたも可愛いわね。ぜひ、美術部に入って欲しいわ」
 と言って抱きついたまま、なかなか離れない。
「お兄ちゃんに巨乳を押し当てる副部長。美人下級生に抱きついたまま離れないHカップ副部長」
 そして、
「ちなみに抱きつかれている優子もHカップ。ダブルH」
 と和葉はうんうんと納得しながら言った。
「そう言えば、あなたもHカップだったわね? どれどれ?」
 と優子の豊かな胸の膨らみを鷲掴みにして、優しく揉んだ。
「あっ……。ちょっと……。先輩、やり過ぎです……」
 と頬を赤らめる。すると、
「先輩。もう、そのくらいにしてあげて下さい。触りたいんだったら、僕を触って下さい」
 と竜馬は岡本副部長の顔を見つめながら言った。
「……竜馬さん……」
「フフッ。あなたって優しいだけじゃなくて、ちゃんと『やめて』と言える人なのね。ますます、気に入ったわ」
 と優子から離れた。
「ごめんなさいね。二人が余りに可愛いから、からかい過ぎたわ」
「いえ、分かって下さればいいんてす」
「それにしても」
 と竜馬は静かにしている和葉を見た。
「和葉はやけに大人しいな」
 と言うと、
「私は今回の写生は真剣なのよ。遊びじゃないのよ。岡本先輩もお兄ちゃんも優子も邪魔をしないでくれる」
 と鉛筆を持った手が常に動いていた。
「ごめんなさい。邪魔をするつもりはないのよ。怒ってる?」
 と和葉の後ろに立って両肩に手を置いた時だった。
「あなた! ええっと!」と一度、和葉から離れて名簿を確認した。
「新屋敷和葉さん! あなた、その作品は!」
 と名前を呼びながら、また和葉の後ろに立った。
「その作品はまだ途中なの?」
「はい。でももう少しで完成ですけど」
「分かったわ。完成させてくれる?」
「はい。分かりました」
 と周りの話し声に混じって、和葉の鉛筆が走る音が微かに聞こえた。
 和葉は一度、大きく深呼吸をして、
「出来ました」
 と顔を上げた。

つづく。

登場人物。

岡本響子(おかもときょうこ)
美術部二年生で副部長をしている。長い黒髪の美人。バストサイズはHカップ。一卵性双生児の姉で、明美という妹がいる。妹は髪をポニーテールにしている。
「胸が大きいって生活する上で大変なだけ」と和葉に語ったことがある。

岡本明美(おかもとあけみ)
美術部二年生。長い黒髪の美人だが、髪をポニーテールにしている。一卵性双生児の妹で、美術部副部長で響子という姉がいる。バストサイズは姉の響子と同じHカップ。
  
2022年11月12日20︰00更新。

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 こんにちは。
 東岡忠良(あずまおかただよし)です。  小説サイトのアルファポリスで連載中です。
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【16】双子の妹の保護者として、今年から共学になった女子高へ通う兄の話

【16】和葉。ソフトボールの説明を、優子に「裸でソフトクリームを溶かす競技だ」とウソつく。

  東岡忠良(あずまおか・ただよし)

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 お待ちしています。

──1──

 結局、新屋敷竜馬と妹の和葉、そして相生優子の三人は、文化祭や発表会、コンテストなどの舞台がある時にだけ、演劇部に参加する『仮入部』を済ませた。
 舞台のある体育館を出て行きながら、明日の話になった。
「今日はとても楽しかったよ。誘ってくれてありがとう。僕は明日は料理部の見学に行こうと思っているんだ」
 と一組の園田春樹は目を輝かせながら話した。
「春樹は元々料理部に入る予定だったのに、演劇部の見学について来てもらってよかったのかな?」
 と竜馬は申し訳なさそうにした。
「いいんだよ。というか、むしろありがたかったよ。前々から演劇部は楽しそうとは思っていたし、こんな僕でも演技が上手いだなんて、お世辞だと分かっていても嬉しかったし」
 と照れた。
「春樹は本当に上手かったよ。僕が見たオーディション参加者の中でも、五本の指に入る上手さだったし」
 と竜馬は左手の五本の指を広げて見せた。
「そうだよね~。男子では園田君が一番上手かったかもだね~」
 と小夏。
「男子ではって、僕と春樹しか出ていないんですけど」
 と竜馬は小夏にいたずらっぽく言った。
 小夏は笑顔で、
「竜ちゃんもどちらかと言えば、上手い方だよね~。それに背が一八〇センチもあるから、舞台では輝いて見えたよね~」
 と小夏はフォロー気味に言った。
「舞台出演が決まったら、必ず教えて下さいね。私、必ず見に行きます」
 と薫は楽しみを見つけたかのようである。
「ところで誰か、明日はどうしても見学したい部活はあるのかな?」
 と竜馬。
「僕は予定通りに料理部を覗いてみるよ」
 と春樹。
「私は明日から陸上部なんだよね~。これからほとんど休みなしなんだよね~。残念でもあり、期待大って感じかな~」
 と小夏。
「私は明日は家の事情で授業が終わり次第、早く帰らないといけないんです」
 と薫。
「つまり、明日、暇なのは私とお兄ちゃんと優子だけなのね」
 と和葉。
「ちょっと、暇って何よ! 失礼しちゃうわね」
 と優子が頬を膨らませた。
「僕はソフトボール部を見学しようと思ったんだけど、やめたんだ」
「え! どうして?」
 と春樹が訊いた。
「一緒にプレイしようと思っていたんだけど、男子は女子に混じって練習試合は出来ても、公式戦には出られないって言われてさ」
 と竜馬は落胆気味に言った。
「お兄ちゃん」
「? 何?」
「女子に混じる、というワードをお兄ちゃんが言うと、なんだか飛び抜けてエッチだわ」
「え! 何を言ってるんだよ!」
 と竜馬。
「ソフトボール? 名前は聞いたことあるけど、どんな競技なのかしら?」
 と優子は竜馬の側まで近づいて聞いた。
「それは……」と竜馬が答えようとした横から、
「それはね。男子は女子に混じっての公式試合出場は出来ない。つまり!」
 と和葉は語った。
「ソフトボールっていう競技はね。九人が裸になって身体を擦り合わせて、ソフトクリームを早く溶かしてボール状にした方が勝ちというスポーツなのよ」
 と説明した。すると、
「ええ! そんなスポーツがあるの! でもそれって終わったら身体がベトベトにならない?」
 と真面目に優子が言ったので、和葉は「プッ」と優子から顔を背けた。
「あのう。優子さん」
 と竜馬が和葉を呆れ気味に見てから、優子にきちんと説明しようとしたが、
「ちょっと待って! 練習試合の時は、裸の女の子八人の中に、裸の竜馬さんが混じって、お互いの身体を擦り合わせるってこと!」
 と顔が徐々に真っ赤になっていった。
「あのう……。優子さん……」
 と竜馬は本当の事を教えようとしたが、優子の妄想は止まらない。
「そ! それって! もしかして竜馬さんも、は、裸なの?」
 すると和葉はここぞとばかりに、
「男子は少し不利なのよ。なんせ、女子同士だとおっぱいとおっぱいを激しく擦り合わせられるから、特に高い熱が出せるのよ。だから、優子のようにおっぱいの大きい女性は選手に向いているわね」
 と特に真面目な口調で言った。
「そうなの!」
 と優子は言うと、
「竜馬さんが見学に行くなら……。その私も行ってみようかな……。恥ずかしいけどその、おっぱいが大きい女性が選手向きなのよね……」
 と真剣な表情で横の竜馬を見つめた。
「優子さん、ウソですから」
 と竜馬。
「え! ソフトボール部に見学に行くというのがウソなの?」
「いえ。和葉が言ったソフトボールの競技内容です」
「……え? あのう……。確認していいかしら? どこからどこまでが本当の事なの?」
「競技人数が九人以外は全部ウソよ。大体、裸でお互いの身体を擦り合わせるスポーツなんて、ある訳ないでしょう」
 と和葉は呆れ気味に言った。
「だ! だって! 相撲とかプロレスとかあるじゃないの!」
「相撲とプロレスって組み合っているだけであって、お互いの身体を擦り合わせている訳じゃないと思いますよ」
 と薫は指摘した。
「じゃあ、おっぱいが大きい女性が選手向きっていうのもウソ?」
「優子ちゃん、この世におっぱいが大きくて有利なスポーツなんてある訳ないよ~。基本的にスポーツって走らないといけないから、大きなおっぱいなんて逆に不利なんだよね~」
 としみじみと小夏は言った。
「か! ず! は~! あんな、また私を騙したわね~!」
 と優子は怒り心頭である。
「ごめん、ごめん。だってソフトボールを知らないなんて、信じられなかったんだもの」
 と和葉。
「ま、まあ。学校よっては授業でやらないスポーツもあるんじゃないかな」
 と竜馬は言った。
 怒った表情をしながらも、ソフトボールをなぜ知らないかを上手く説明出来ない優子は、段々と暗い表情になっていったが、
「そんなに暗い顔をしないの。いいお尻とおっぱいをしているんだから」
 と和葉は優子の背後に立って、お尻を触り、胸を鷲掴みにした。
「キャッ! くすぐったい! 何するのよ!」
 と和葉に怒った。
「こんなに大きな物を胸に付けていたら、そりゃ体育も苦手になるでしょうよ」
 と和葉はまだ、優子の胸を触っている。
「ちょっと、和葉、しつこい!」
 と言って、
「そういう、和葉だってそんなに変わらないじゃないの!」
 と和葉の胸を掴んだ。
 このこのこの!
 と和葉と優子はお互いの胸を触りあう。
「陸上競技って特にそうですよね。胸が邪魔で」
 と歩いている薫は制服がはち切れそうな大きな胸を揺らしながら言った。
「と言っている薫ちゃんって、体育のランニングでも結構速い方だよね」
 と優子の胸の手を止めて和葉は言った。
「和葉さんほどじゃないですけど、運動は得意なんです。幼稚園から小学校までは、体格もみんなと変わらなかったので、これでも足は速い方だったんですよ」
 そして薫は自分の胸に手を当てながら、
「小学校六年くらいから背は伸びないのに、段々と胸が大きくなってきて。背も伸びて欲しかったんですけど、なぜか胸ばかり大きくなっちゃって」
 と苦笑した。
「あのう!」
 と竜馬が大きな声を出した。
「ここに男子生徒が二人もいるので、出来たら女性の胸の話は控えて欲しいんですけど?」
 と顔を赤らめながら言った。見ると、春樹は顔も耳も真っ赤である。
「あっ! ごめんなさい。そんなつもりじゃなかったの」
 と瀬川薫は慌てた。
「お兄ちゃん!」
 と和葉は竜馬に顔を近づけた。
「な、なんだよ?」
「それは逆よ! 男子生徒が二人もいるから、おっぱいの話をしているのが分からないの? 空気、読んでよ」
 と和葉は怒り気味に言った。
「わ! 私、そんなつもりじゃないてすよ!」
 と薫も頬が真っ赤になった。
「おっぱいの話をしてお兄ちゃんと春樹君の反応を見るのが、私達の楽しみなんだから」
 と和葉が言うと、
「ちょ! 私達って言わないでよ!」
 と優子も真っ赤になりながら拒否した。
「わ! 私もです!」
 と薫。
「まあ、私は竜ちゃんと春樹君ならギリギリOKかな~。二人共、なんだかんだ言っても真面目だしね。特に竜ちゃんは昔から知っているし~」
 と微笑みながら小夏は言った。
「そうね。二人共、とても真面目だものね。もう春樹君も私達と仲良くなったと思うから、私達がおっぱいの情報を二人に提供するから、お兄ちゃんと春樹君はおちんちんの情報を、私達に教えて欲しいわ」
 と和葉は真面目な表情で言った。
「おっ! おちんちん!」
 と優子と薫は同時に声が出た。
「おちんちんかあ~。小学校低学年までは、竜ちゃんと和ちゃんと三人で、時々一緒にお風呂に入っていたよね~」
 と小夏はいたずらっぽく笑った。
「そうよね。あの時は私、お兄ちゃんのおちんちんをしっかりと横目で観察させてもらっていたわ」
 と和葉。
「しっかりと横目で観察って。それってしっかり見ていないんじゃあ」
 と薫。
「だって『私にはついていないから、しっかり見せて!』って何度もお願いしたけど、『エッチなのはダメ!』ときっぱり拒否されたのよ。酷くない!」
 と和葉は被害者面をした。
「そんなの当たり前だろ!」
 と竜馬。
「そう言えば、和ちゃん、時々言っていたよね~。『おちんちん、見せて』って」
 と小夏は懐かしそうな表情をした。
「幼稚園から小学校までは、お兄ちゃんはとても小柄で、私達三人の中で一番小さかったんだけど」
「えっ? 竜馬さんって小学生までは小さかったの! それって可愛かったんじゃあ」
 と優子が食いついた。
「お兄ちゃん、小柄な上に散髪が嫌いで肩まで髪を伸ばしていた事が多かったから、よく女の子に間違われていたよね」
 と和葉。
「そうそう。逆に私は大柄で髪を今よりもっとショートにしていたから、よく男の子に間違われてさ~」
 と小夏も懐かしむ。
「ところがよ!」
 と和葉は続ける。
「お兄ちゃんは身体は小さかったのに、おちんちんだけは他の男の子達よりも大きかったんだよね。だからよく見せてもらいたかったのよね」
 と、この世にこれ程後悔する事はないような言い方をした。
「言われてみれば、確かに大きかったね~」
 と小夏も続いた。
「和葉も小夏もどこを見ているんだよ」
 と怒気を込めながら苦笑する竜馬。
「だから今のおちんちんの大きさを機会があったら教えてね。なんならサイズを測らせてくれてもいいわ」
 と和葉は竜馬に顔を近づけて言った。
「そんなの、教える訳がないだろ!」
「仕方ないわね。なら春樹君。きっと二人ならこれから一緒に水着に着替えたり、お風呂に入ったりする事があると思うから、その時はお兄ちゃんのおちんちんをしっかりと観察して、私達に報告してね」
 と期待を込めて、和葉は春樹を見つめた。
「ボ、ボク、そんなこと、出来ないよ」
 と赤面しながら拒否をした。
「もちろん、無報酬という訳にはいかないから、そうね。優子のおっぱいを三回揉むので手を打つわ」
「な! 何で私の胸なのよ!」
 と優子。
「ボク、竜馬君のおちんちんも見ないようにするし、女の子のおっぱいも触らなくていいよ」
 としっかりと拒否した。
「春樹。お前はやっぱり、いいヤツだよな」
 と竜馬は春樹の肩を抱いた。
「ふ~ん。そうなのね。つまり交渉決別ってことね」
 と和葉は言うと、
「分かった! なら明日は私とお兄ちゃんと優子で、美術部の一日体験に行くわよ!」
 と宣言した。
 美術部!
 とみんなの声が合った。
「美術部で一体、何をするつもりなんだ?」
 竜馬は不安になった。
  
──2──

 次の日の放課後、
「じゃあ、僕は料理部に行ってくるよ」
 と園田春樹と別れた。
「あ。小夏ちゃんはもう、グランドでストレッチをしているわ」
 と窓から手を大きく振った。川上小夏も和葉に気づいたようで、
「和ちゃ~ん!」
 と大声で答えた。
「相変わらず、小夏は元気だよな」
 と竜馬も窓から手を振った。
「竜ちゃ~ん!」
 と竜馬にも応えてくれた。
「じゃあ、皆さん、私はこれで」
 と軽く手を上げて瀬川薫は去って行った。
「家の用事って事だけど、一体何をやっているのかしらね?」
 と相生優子は腕を組んで考えている。
「プライベートは探索しちゃいけないわ」
 と新屋敷和葉。
「確かにそうだよな。まあ、でも僕は中一の時に同じクラスだったから、知っているんだけど」
 と新屋敷竜馬は言った。
「え? もしかして和葉も知っているの?」
 と優子は和葉を見た。
「知っているわよ。薫と仲良くなった日に、お兄ちゃんから教えてもらったから」
「え。それってもしかして、私だけ知らないの……」
 と優子は悲しそうな表情に変わった。
「別に優子だけが知らない訳じゃないわよ。春樹君も小夏も知らないから」
「でも、同じクラスなのに友達で知らないのは、私だけでしょう……」
 と下を向いた。
「優子。あなた、結構面倒臭いわね」
 と和葉が言うと、
「分かったよ。教えるよ。でも本当は薫さん自身から教えてもらう方がいいと思うんだけどね」
 と竜馬は言い、
「薫さんの家は老舗の温泉旅館なんだ。老舗と言ってもそんなに大きくはないんだけど、人気の宿みたいなんだ。お祖父さんとお祖母さん。ご両親とお兄さんとお姉さんだったかな? 主にはその六人と従業員の方達で旅館を回しているらしいんだ」
 と知っている事を説明した。
「へえ~。そうだったのね。うん? ちょっと待って。主に六人と従業員の人達に薫は入ってないの? なら何で早く帰るんだろう?」
 と優子は疑問に思った。
「その質問、私もしたわ」
 と和葉。
「薫さんには五歳の弟と二歳の妹がいるのよ。薫はその子供達の子守なんだって」
「なるほど。そういうことだったのね」
 と優子は納得しながら、
「私には十歳、年が離れている兄がいるけど、弟や妹って可愛いんでしょうね」
 と言ったから、和葉がそれに反応した。
「優子ってお兄さんがいるの?」
 と驚いていた。
「ええ。居るわよ」
 和葉は少し考えて、
「だからなのね。なんとなくお兄ちゃんと上手くやっているな、と思っていたのよ」
 と言うと、
「そう? 私、竜馬さんと上手くやってるかなあ?」
 と照れた。
「そうだったんだね。僕はてっきり優子さんは一人っ子だとばかり思っていたよ」
 と竜馬。
「と言っても仕事をしているから、年に数回しか会わないけどね」
 と少し寂しそうに言った。
「優子のお兄さんって、どんな感じなの? 画像とかある?」
 と和葉は興味津々である。
「あるわよ。確かスマホに……」
 と取り出したスマホを少し触ると、
「あった。はい、どうぞ」
 と和葉に見せた。
「へえ~。これはなかなかな男性ね」
「え。そうなの。僕も見ていいかな?」
「どうぞ」
 と竜馬の方にスマホを向けた。
 そこには兄妹だとすぐに分かるくらいに、優子に似た青年が写っていた。美人の優子にそっくりという事は、美少年がそのまま青年になったような優雅さがあった。
「お兄さん、とても優しそうで素敵だね。それにとても女性にモテそうだよね。僕とは全然違うな」
 と竜馬は特に深い意味もなく言ったが、
「そんなことないよ! 竜馬さんも素敵よ!」
 と優子は竜馬に顔を近づけた。
「いやいや、僕なんて全然モテないし。告白されたのだって中三の時の一回だけだし。だけど結局、上手く行かなかったし……。バレンタインデーだってくれたのは、その子と小夏と和葉とお母さんだけだし……。もちろん、義理だし……」
 と段々と下を向いてしまった。
「お兄ちゃん、いつも思うけど恋愛の話になったら、何でそんなに自信を失っちゃうの?」
 と和葉。
「そりゃ、和葉はモテモテだから分からないんだよ。中学時代に何回か告白されていただろう」
 と竜馬は言った。
「え! 和葉って告白されたことがあるの! それも何回も!」
 と優子は驚いている。
「あるわよ。もう、回数は忘れたけど。もちろん、全部断ったわ。中学時代は告白してきた男子生徒達には申し訳なかったけど、この如月高校に何としても合格するために、恋愛どころじゃなかったのよ」
 と言うと、
「えっ? でもそれっておかしくない? 和葉はトップ合格だったでしょう。なのにそんなにギリギリだったの?」
 と優子が不思議がると、
「私は余裕で合格出来たんだけど、どうしてもお兄ちゃんと一緒に如月に通いたかったのよ。でもお兄ちゃんの学力がどうしても足らなくてね」
「それでどうしたの?」
「空き時間のほとんどをお兄ちゃんを教える時間に当てたのよ。これがなかなか大変だったわ」
「そうなの?」
 と優子は竜馬を見た。
「うん……。そうなんだ。そのおかげで如月学園に入れたけど、中学三年の時はほとんど自由時間がなくてさ……」
「お兄ちゃん、どうしてもギリギリまで野球がしたいって言って、中三一学期まで夜遅くまで野球漬けだったものね。まあ、気持ちは分かるけど……。如月学園には野球部がないからね」
「まあでも、こうして無事に如月に合格出来たのは、和葉のおかげだから、感謝しているよ」
 と良い話のように、竜馬は持っていったが、
「お兄ちゃんが本気で勉強をするようになったきっかけって、合格したらお小遣い二倍にするのと、ゲーミングパソコンを買ってもらえるってなった時よね」
 と和葉は少し呆れながら言った。

──3──

「ちょ! それを優子さんの前で言わなくてもいいじゃないか!」
「ダメよ。優子にはしっかりとお兄ちゃんの事は伝えておかないとね。ゲームオタクだということをね」
 と和葉が言うと、
「竜馬さんってゲームオタクだったの? てっきりスポーツ少年なのかと思っていたわ」
 と少し驚いた表情になった。
「ほら。優子さんの中で、僕の評価が下がっただろう」
 と竜馬はため息をついたが、
「私、竜馬さんのことが知りたいから、その情報はとても嬉しいわ! 和葉、ありがとう。ゲーミングパソコンかあ~。普通のパソコンとどう違うのかしら?」
 と優子は言った。
「優子。あなたにはゲーミングパソコンは無理よ。なんせ、かなりの高額商品だからね。文房具のほとんどは百円ショップの物で、服は安い販売店の物ばかりじゃないの。如月学園は学費が高いから、親御さんにこれ以上の負担をかけてはいけないわ」
 と心配そうに和葉は言った。
 優子は「ちょっとごめん」と新屋敷兄妹から少し離れると、
「そう言えば、うちが相生財閥だってことは秘密にしていたんだった。中三の時に金持ちだから付き合ってもらえてたというのが、どうしても嫌になったから、高校では持ち物をすべて安い物に変えたんだったわ」
 とつぶやき、
「竜馬さんと和葉。薫ちゃんも小夏ちゃんも春樹君も、私がお金持ちだから付き合ってくれているんじゃなく……」
 そうつぶやき、新屋敷兄妹を見た。
「どうしたの? 優子!」
 と和葉。
「私という一人の人間と付き合ってくれているんだよね……」
 と微笑んで、
「そうね。ゲーミングパソコンがそんなに高いのなら、やめておくわ」
 と優子は二人の側に行き、
「竜馬さん、もしよかったら、竜馬さんの家に行った時に、それでゲームをやらせてくれるかしら?」
 と頼んだ。
「え? ええ? いや、それは構わないけど……」
 と竜馬は焦る。
「ん? どうしたの? 竜馬さん?」
 と優子は挙動不審になった竜馬を見つめながら、不思議がっていると、
「優子、あなた。今、自分が何を言ったか分かってないんじゃないの?」
 と和葉。
「え? どういうこと?」
「お兄ちゃんのゲーミングパソコンって、大きなデスクトップ型なのよ。そのパソコンでゲームするってことは!」
「ことは?」
「うちの家に来て、お兄ちゃんの部屋に行くってことよ」
「え……? あ~~!」
 優子は慌て出した。
「ちなみに」
「ちなみに何よ?」
「お兄ちゃんの部屋には、ベッドがあるわよ」
「べ! ベッド!」
「そう、ベッド。だから優子がゲームに夢中になっている間に、お兄ちゃんの太い腕が、優子の細い腰に回って来て」
「回って来て!」
「男の部屋にこうしてやってくるってことは、何をされてもいいってことだよな。優子さん……」
 と和葉は兄竜馬の喋り方を真似た。演技力は演劇部を感心させる程上手いので、まるで竜馬が言っているように感じさせた。
「な! 何をされても!」
「優子さん……。いや、優子。何て綺麗な脚なんだ……」
 と和葉は優子の太腿に触れる。
「あっ!」
「この可愛いお尻とか……」
 と優子のお尻を撫でる。
「ちょ、ちょっと……」
「そして、この大きなおっぱいを僕が自由にしていいってことだよね」
 と和葉は優子の胸を触った。
「だ! ダメよ、竜馬さん……」
「でも全然、拒否しないじゃないか……。嫌じゃないのかい……」
「そんな、私……。嫌じゃないというか、私、その……。竜馬さんのことを……」
 と優子が言ったところで、
「優子さん、僕は大事な友達にそんなことは絶対にやらないよ」
 と竜馬の声がした。
「ああ。竜馬さんの声が……。あ?」
 と優子は正気に戻ると、
「かっ! 和葉~! あんた、またイタズラしたわね!」
「優子だってノリノリだったじゃないの」
「ノリノリってあなたねえ!」
 と顔を真っ赤にしながら激怒している。
「でもさあ。なかなか、ロマンチックだったでしょう?」
 と和葉が言うと、
「え! ええ……。まあ……」
 と満更でもない表情になった。
「男のお兄ちゃんよりも、女の私の方が女の子を喜ばせるツボは押さえているから」
 と和葉は優子の耳元で言った。
「ちょっと……。耳元で囁(ささや)くのはやめてよ……」
 と優子は和葉から離れると、
「あのう……。美術部には行かないのかい」
 と苦笑した竜馬が言った。
「そうだわ。こうしてはいられない」
 と和葉は先頭に立って歩き出した。
「やれやれ」
 と少し離れて竜馬が歩き出すと、優子が竜馬に近づき、
「竜馬さん、いつか竜馬さんの部屋でゲームさせてね」
 と囁(ささや)いた。
「え? う、うん。もちろん」
 と言うと、優子は微笑みながら竜馬の方を見つめてから、
「ちょっと、待ってよ」
 と和葉に近づき、
「仕返し!」
 と和葉のお尻を撫で回した。

つづく。

登場人物。

2022年11月2日

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 また、まとめサイト等への引用をする場合は無断ではなく、こちらへお知らせ下さい。許可するかを判断致します。

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